パンフレットデザインの契約交渉破棄 勝訴しました。


 印刷会社がパンフレットのデザイン・印刷を受注しました(メールで)。

 注文主から商品のデータの提供を受けデザイン作成をすすめていました。最終段階で注文主から商品を一部差し替える必要が生じたとの連絡がありましたが、差し替えのデータの提供を拒んできました。

 そこで、印刷会社が制作費(デザイン費など)のみ請求をしたが、注文主は契約はまだ成立してないと主張して代金支払を拒んだ事案。


争点は
①請負契約は成立しているか?
②請負契約で、仕事が完成していないのに、報酬を請求することができるか?
③(契約が成立していないとして)契約締結上の過失を請求できるか?
④契約締結上の過失の賠償の範囲(信頼利益の範囲)は?
というものでした。

 

判決は、①を認めて、②では注文者の過失で仕事完成義務が履行不能となった場合、反対給付請求権は消滅しない(民法536条2項-危険負担(債権者主義))として、制作費全額の支払いを命じるものでした。

 

②について、注文者の過失で仕事の完成ができなくなった場合、

a)民法633条(請負代金の報酬支払時期)の問題として出来高払いを認めるものと、

b)民法536条2項(危険負担)の問題として全額の請求を認めた上で、請負人が仕事の完成をしなくてよくなったことにより利益を得ていたことを注文者が主張・立証しときには利益を償還しなければならないとするものがあります。

bの立場の最高裁判例(S52.2.22民集31-1-79)があるのですが、その後もaの立場を取る下級審判決(東京高裁S59.7.25判時1126-36)が出たりしています。

 

 

 

 

 

 

2018年05月11日