土地は捨てられるのか 男性、国を相手に「実験的訴訟」

まとめると

司法書士の男性が、2014年、島根県安来市の山林約2万3千平方メートルを父親から生前贈与された。

その3週間後、男性は山林の所有権を「放棄」した。

そして、所有者のいない不動産なので国が引き取るべきだと訴えを起こした。

 

無主の不動産

民法239条【無主物の帰属】

② 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

 

裁判例では、次のような場合国庫へ帰属を認めたものがあります。

 所有者不明の土地(肯定例 和歌山地判T6.10.26新聞1340-22、否定例 最判H23.6.3裁判集民事237-9)

 相続人不存在の土地(旧幕時代のケース)(大判T10.3.8民録27-422)

 民法施行前に絶家した場合の不動産(仙台高判S32.3.15下民集8-3-478)

 

不動産の放棄

不動産の所有者が所有権を放棄できれば、放棄→無主の不動産→国庫帰属となるのですが、民法に規定はありません。

 

学説

①我妻「物権法」(1947)p168、同旨 舟橋「物権法」(1960) p52

 所有権の放棄は、特定の人に対する意思表示を必要としない。占有の放棄その他によって放棄の意思が表示されればよい。

 但し、不動産所有権の放棄は、登記官吏に申請して登記の抹消をしなければ第三者に対抗し得ない。

 

②広中「物権法 第2版増補」(1982)p134

 不動産所有権の放棄は認められるか。…不動産を無主物たらしめるような(絶対的)放棄…を…認める必要はないように思われる。

 

③五十嵐・瀬川「新版注釈民法(2)」(2007)p379

 不動産所有者が所有権を放棄できるか否かについては、我が民法には規定がなく、はっきりしない。

 

本件の判決

松江地裁H28.5.23(訟務月報62-10-1671)

 

1 男性が土地の所有者となった経緯

 ① H26.9.18 父が土地を相続

 ② H26.10.1 父が男性に土地を贈与

 ③ H26.10.17 移転登記

 ④ H26.10.23 国に対して訴えを起こし、所有権放棄の意思表示をしたうえで、国に対し移転登記を求めた(登記引取請求)。

 

2 土地の価値

  土地の地目・地積 山林 2万3414㎡

  評価額 47万9856円

  年税額    7677円

 

3 管理費用

  境界確定 52万0676円

  巡回警備  1万328円/年

  柵設置 100万7328円

  草刈費用  6万5240円/年
    枝打ち   899円/本×相当数


4 所有権放棄の経緯・目的

  (動機)

  父親の所有であった土地について、将来的に相続することにより自身がこれを保有し続けなければならない事態を避けたいと考え。

  (目的)

  自ら所有権放棄の意思表示をし、土地の所有権を喪失することを目的として、あえて父親から贈与を受けて所有権を取得した上、訴訟で所有権放棄を行った。

  (意図)

  具体的にではないにしても、本件各土地を所有することにより将来的に背負うことになる負担ないし責任を回避する意図を有していた。

  他方で、民法239条2項により本件各土地を所有することとなる国にかかる負担ないし責任が移転するものと認識していた

 

5 放棄の効果

  財産的価値の乏しい各土地について、その管理に係る多額の経済的負担を余儀なくされることとなるものである。

 

6 結論

  土地の負担ないし責任を被告に押し付けようとするもの

 

  不動産の所有者に認められる権利の本来の目的を逸脱し、社会の倫理観念に反する不当な結果をもたらすものであると評価せざるを得ない

 

  権利濫用に当たり許されない。

 

控訴

判決は控訴されています。(結論は分かりません)

 

元記事

土地は捨てられるのか 男性、国を相手に「実験的訴訟」
 朝日デジタル 大津智義2017年12月4日20時16分



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2017年12月04日|ブログのカテゴリー:不動産, 物権法