車大手、期間従業員の無期雇用を回避 法改正、骨抜きに

まとめると

平成23年4月に労働契約法が改正された。

非正規雇用が5年継続したとき、従業員の申し込みで、正規雇用に転換されるという内容。

ただし、途中で6か月以上のクーリング期間があれば、それ以前の期間はカウントに入れない。

多くの自動車製造大手会社では、クーリング期間を1か月→6か月に変更していた。

 

労働契約法

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第一八条 

① 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(…)の契約期間を通算した期間(…「通算契約期間」…)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。(以下略)

 

② 当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(…)があり、当該空白期間六月(…)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

正規雇用転換の5年ルール

改正の理由は、「有期労働契約は(非正規雇用)に共通してみられる特徴になっていますが、有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消していくことや、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を是正していくことが課題となっています。」「こうした課題に対処し、労働者が安心して働き続けることができる社会を実現するため、有期労働契約の適正な利用のためのルールを整備すること」とされています。

 

この改正は、民主党政権のときに改正されたものです。

議事録を見ると、自民党議員が委員会への出席を拒否していたりします。

空白期間(クーリング期間)

クーリング期間が6か月あれば、それ以前の雇用期間は通算契約期間にカウントされないことになっています。

 

その理由は「仮にクーリング期間を認めないことにすると、5年で離職をした労働者が再度同じ企業で働くことが事実上困難になりまして、同一の企業での再雇用を希望する労働者の就職選択の幅が狭められてしまう。」ことと、「無期転換ルールを導入する諸外国でも一定の条件でクーリングを認めるのが一般的で」あるからとされています。

 

そして、クーリング期間が6か月とされた理由は、「短すぎる場合には無期転換ルールの導入の効果を減殺させる一方で、長すぎる場合には労働者の雇用機会確保の観点から問題とな」るからと説明されています。

 

なお、諸外国では

  フランス 契約期間の1/2
    オランダ 3か月
    ドイツ  3年(判例)

共産党の批判

クーリング期間を設ける理由について、共産党の委員から、非常に真っ当な批判がなされています。

「職業選択のニーズからでてきた議論ではなく、使用者側の要望ででてきた議論(もっと短くていいと言っている)であるということを認めないとだめだ。」

 

そして、クーリング期間の長さについても、今回の事態を見越した批判がなされています。

「6か月以上のクーリング期間があれば、雇用期間がリセットされて、何度でも有期契約ができることになってしまいます。」

「本当に細切れの契約をつないでいって、ちょうどよくクーリング期間を置けば、どんど長く雇い入れることができることになる。」

脱法行為は防げなかった

労働政策審議会 (労働条件分科会)議事録を意訳すると、

① 労働側委員は「クーリング期間を設けたら、(労働者派遣のときと同じように)脱法行為を招くだけだ。」と主張し、

② 経営者側委員は、「クーリング期間をなくしたら、通算契約期間を経過したらもう雇わないけど、それでかまわないのか」と恫喝し、

③ 労働側委員は、「雇用保険の受給期間より短いと、クーリング期間は雇用保険を受給させておいて、雇用保険が切れたタイミングで、再度有期で活用するというような脱法行為を誘発する」とも主張されていました。

 

しかし、どうして3か月でも1年ではなく6か月なのか?については分かりません。

 

そして、今回の記事で、6か月のクーリング期間でも、脱法行為は防げないことが実証されました。

 

一度非正規雇用を緩和してしまった以上、もう正規雇用転換は無理なのかもしれません。

同一労働同一賃金しか手はないように思えてきました。

 

元記事

車大手、期間従業員の無期雇用を回避 法改正、骨抜きに

朝日新聞デジタル 大日向寛文 2017年11月4日05時03分


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2017年11月04日