性犯罪被害者の特定につながる氏名や住所などの個人情報を保護する制度の新設を盛り込んだ改正刑事訴訟法などの関連法が10日、参院本会議で可決、成立した。公布後、9カ月以内に施行される。
性犯罪被害者らの情報をめぐっては、これまでも法廷で氏名を伏せることができる制度があった。
一方、容疑者に示される逮捕状や、被告に送られる起訴状の謄本には、原則として被害者の氏名や住所など本人を特定する情報が記されている。性犯罪の被害者には被告と面識がないケースも多く、被告に個人情報が知られることをおそれて被害申告をためらう例があるとして、対策が求められていた。
今回の改正で、容疑者・被告に提示、送付する逮捕状や起訴状は、被害者の個人情報の記載を省いた「抄本」とすることができるようになった。弁護人には、被告に伝えないという条件で個人情報が記載された謄本を送達する。
一方、情報が秘匿されることで被告が反論する防御権が損なわれるおそれがある場合には、被告や弁護人が裁判所に情報の通知を請求できる仕組みも規定した。(久保田一道)
日本経済新聞 2023年5月10日 13時05分