転居先の調査 ⑤

まとめると

日本郵便(株)が転送届についての23条照会に回答拒否。

 

依頼者と弁護士会が日本郵便に慰謝料を請求したが第1審は棄却。

 

控訴審は、依頼者の慰謝料請求を棄却したが、弁護士会の慰謝料請求を認容(回答義務確認の予備的請求は判断せず。)。 

 

最高裁は、弁護士会の慰謝料請求を棄却、回答義務確認請求を高裁に差し戻した。

 

名古屋高裁(差戻審)は、郵便物についての①転居届の提出の有無、②転居届の届出年月日及び③転居届記載の新住所(居所)について、控訴人に対し報告する義務があることを確認するとの判決を下した。

 

最高裁(差戻審)は、原判決を破棄し、確認の訴えを却下。

 

本件確認の訴え自体の適法性(確認の利益の有無)

 弁護士法23条の2第2項に基づく照会(以下「23条照会」という。)の制度は、弁護士の職務の公共性に鑑み、公務所のみならず広く公私の団体に対して広範な事項の報告を求めることができるものとして設けられたことなどからすれば、弁護士会に23条照会の相手方に対して報告を求める私法上の権利を付与したものとはいえず、23条照会に対する報告を拒絶する行為は、23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはない(最高裁平成27年(受)第1036号同28年10月18日第三小法廷判決・民集70巻7号1725頁)。

 

 これに加え、23条照会に対する報告の拒絶について制裁の定めがないこと等にも照らすと、

 

 23条照会の相手方に報告義務があることを確認する判決が確定しても、弁護士会は、専ら当該相手方による任意の履行を期待するほかはないといえる。

 

 そして、確認の利益は、確認判決を求める法律上の利益であるところ、上記に照らせば、23条照会の相手方に報告義務があることを確認する判決の効力は、上記報告義務に関する法律上の紛争の解決に資するものとはいえないから、23条照会をした弁護士会に、上記判決を求める法律上の利益はないというべきである。

 

本件確認請求を認容する判決がされれば日本郵便が報告義務を任意に履行することが期待できることなどの原審の指摘する事情は、いずれも判決の効力と異なる事実上の影響にすぎず、上記の判断を左右するものではない。


  したがって、23条照会をした弁護士会が、その相手方に対し、当該照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは、確認の利益を

欠くものとして不適法であるというべきである。

 

 以上によれば、本件確認請求に係る訴えは却下すべきである。

 

元記事

最高裁判所 平成30年12月21日判決

 

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2019年01月14日