まとめると
犯人は、「偽造パスポート」と「偽造印鑑証明」を用いて地主になりすまし、登記を申請した。
法務局が「所有者側の提出書類に真正ではないものが含まれていた。」として申請を却下した。
どのようにすれば見破ることができるのかは不明。
パスポートを身分証明書に用いるものが多いようです
前回の記事の時に、類似の裁判例を調べたのですが、パスポートを身分証明書に用いたものが多いなという印象を受けていました。
なりすましのしやすさ
元記事では偽造パスポートとされていますが、偽造したものか、偽装したもの(犯人が本人になりすまして不正取得したもの)か、どちらかは不明です。
偽装(なりすまし)だとすると、パスポート申請の方が、なりすましやすいのでしょうか?
申請書類
そこで、申請亭続きを比べてみました。
①仮免許証
②他の種類の運転免許を持っている人は、その免許証
③他の運転免許のない人、仮免許証の有効期限が切れている人は、次の2つ
住民票(本籍の記載あるもの)
本人確認書類(健康保険証、住民基本台帳カード、パスポート、学生証、社員証 など)
④自動車学校の卒業証明書
⑤写真
①戸籍謄本、
②住民票の写し、
③写真、
④本人確認書類
例1、運転免許証、
例2、印鑑証明書・印鑑 と 会社の身分証明書(写真付き))
申請書類の点では、パスポートが特になりすまししやすいという訳ではなさそうです。
受取手続
運転免許証の場合、運転試験場で学科試験を受けて合格すれば、その日のうちに試験場で交付されます。
パスポートの場合、後日、本人が申請時に渡された受理票をもって窓口に行けば交付されます。
受取手続では、パスポートの方が楽なようです。
偽造のしやすさ
偽造だとすると、パスポートの方が偽造しやすいのでしょうか。
取引相手方や司法書士は、運転免許の方が普段から見る機会が多いので、バレる危険が高いのかもしれません。
パスポートを提示されたときは注意?
なりすましの場合、パスポートを提示する人が圧倒的に多いようなのですが、今のところどうしてか確証はありません。
土地を所有している人は高齢者が多いので、運転免許を持っているよりも、パスポートを持っている方が自然だからという理由かもしれません。
理由はよくわかりませんが、パスポートを提示された場合は、注意した方がよいのかもしれません。
元記事
積水ハウスが63億円騙し取られた“地面師”男女の仰天手口
NEWSポストセブン8月28日(月)7時0分
東京五輪バブルを前にして活況を呈する不動産売買の“間隙”に潜り込んで、巨額のカネを騙し取る。そうした詐欺師は「地面師」と呼ばれる。裏社会で暗躍する彼らの存在が明るみに出た。その被害者は、大手住宅メーカー「積水ハウス」だった。【取材・文/伊藤博敏(ジャーナリスト)と本誌取材班】
大手住宅メーカー「積水ハウス」が8月2日に公表した「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」と題したプレスリリースが、不動産業界に衝撃を与えた。
〈当社が分譲マンション用地として購入した東京都内の不動産について、購入代金を支払ったにもかかわらず、所有権移転登記を受けることができない事態が発生いたしました。顧問弁護士と協議のうえ、民事・刑事の両面において鋭意対応しております〉
土地の価格は70億円、そのうち63億円をすでに支払っているとある。つまり積水ハウスは63億円の資金を投じた土地を取得することができなかった。“何者か”に騙し取られたのである。
五反田駅から徒歩3分の一等地にあり、600坪がまとまって存在したこの土地は、長く不動産業界では有名な注目物件だった。
坪単価は1000万円以上、東京五輪を見越した都心一等地の値上がりで100億円にも達すると見込まれる“金のなる土地”──70億円で買えるなら積水ハウスとしては出色の物件だったはずだ。積水ハウスは仲介の不動産会社を通じて“土地所有者”から購入する形を取った。4月の売買契約時に手付金として15億円、6月1日に所有権移転の登記申請を行なう際に48億円が支払われた。残りの7億円は申請完了後に支払う予定だったという。
ところが、ここで予想だにしない事態が起こる。申請から8日後の6月9日、「所有者側の提出書類に真正ではないものが含まれていた」との理由で申請が却下されてしまったのだ。事態を告げられた積水ハウスの関係者は青ざめたという。その日以降、“土地所有者”とは完全に連絡が途絶えた。
いったい何が起きたのか。積水ハウス側との取引の場に現われた土地所有者は、赤の他人がなりすました「偽者」で、提出された印鑑登録証明書もパスポートも、なにもかも「偽物」だったのである。そしてその赤の他人は、63億円とともに消えた──。
〈他人の所有地を利用して詐欺を働く者〉
大辞泉でこう定義される「地面師」と呼ばれるグループに、不動産のプロである積水ハウスがまんまと騙されてしまったのである。彼らは、どんな手口を使ったのだろうか。
◆「池袋のK」と呼ばれる女
JR五反田駅を降り、目黒川の方向に少し歩くと、鬱蒼とした樹木に囲まれた古びた日本家屋がある。
近づくとそこが旅館だったことがわかる。外周は古びた薄茶色のモルタルで一部は崩壊。玄関には「日本観光旅館連盟 冷暖房バス付旅館 海喜館」という看板がかかっているが、何年も営業していない。朽ちた印象から地元では「怪奇館」とも呼ばれている。土地の所有者はこの「海喜館」の3代目女将・Sさん。地元住民はこう言う。
「女優の池内淳子さんに似た美人女将だった。以前からいろんな不動産屋が買いに来たけど、親の代からの土地ということもあり、Sさんは全て断わっていた」
不動産に詳しい司法書士の長田修和氏は、以前からこの土地のことを知っていたという。
「価値の高さはもちろんですが、一方で現在に至るまで、大手不動産会社などが手を出しては諦めてきた、曰く付きの土地です」
その土地を積水ハウスは“Sさん”から手に入れる好機を得た。正確には、“Sさんになりすました別人”から、だったのだが。
事件の一端をうかがい知ることができる証拠品を入手した。“Sさん”が積水ハウス側へ身分証明書として提出したパスポートだ。名前や生年月日こそSさんのものだが、写真に写っている中年女性はお世辞にも往年の大女優には似ても似つかない。複数の近隣住民に確認してもらったが「別人だ」と口を揃える。
その女性はSさんになりすまして、積水ハウスと売買交渉に臨んだ。そのために用意したのがこの偽造パスポートだったのである。印鑑登録証明書も、同じく偽造のものだったという。
この間、本物のSさんは、拉致されていたという情報もあり、本人不在のうえでなりすましの準備を整えていたのである。この「なりすまし女」は誰なのか。取材を進めると、以前、この女性から土地担保融資を持ちかけられたという不動産業者にたどり着いた。
「土地を担保に30億円の融資をしてほしい」という内容で、この時もパスポートを身分証として提出してきたという。
「念のため、銀行通帳のコピーを要求したんだけど、用意できなかったのか、話は流れた。その後、彼女が不動産関係者の間で『池袋のK』と呼ばれる有名な地面師であることが発覚した」(不動産業者)
地面師とは、本来の所有者のあずかり知らないところで所有者になりすまし、土地の売り手となって購入代金を騙し取る不動産詐欺師である。
今回の事件では、なりすまし実行犯のKだけでなく、計画全体をとりまとめたもう一人の地面師が背後にいたと見られている。積水ハウスとの交渉の場にも同席していたという不動産ブローカーだ。
「不動産会社に顔がきき、金融犯罪で逮捕されたこともある。近頃は金に困り、親しい人間に無心しながらサウナ暮らしを続けていたが、なぜか最近、数千万円にものぼる借金を完済し、都内に高級マンションを3軒も購入したと聞いている。鞄にはユーロ、ドル紙幣、キャリーバッグには日本紙幣をぎっちり詰め込んでいるそうだ」(前出・不動産業者)
おそらくこの男女が、事件の“主演兼脚本家”と目されているのである。
4月24日に交わされた契約には、偽造書類を携えた「池袋のK」と“相棒”と思われる不動産ブローカーのカップル、そして彼らの委任弁護士が同席していた。一方、積水ハウス側には司法書士と弁護士、仲介業者の代表が同席した。
巧妙な手口とはいえ、なぜ積水ハウスは見抜けなかったのか。「詳細についてはコメントできません。開示した資料の通りです」(広報部)と口は重く、詳しい経緯はいまだに謎である。
一方、所在不明だったSさんはその後、亡くなったようで、事件発覚後の6月24日に、弟とされる大田区の男性2人に所有権が相続移転されている。売買契約を結ぶはずだった所有者とは別の人物に所有権が移転したため、積水ハウスがこの土地を手に入れられる可能性は極めて低くなった。今後はいかに損害金を回収できるかが焦点となる。
前述の通り、地面師事件の難しさは、なりすまし犯以外はどこまでがグループに加担しているかが分からない点にある。「私も騙された」と被害者を装う関係者の中に、実際には地面師側に付いている人間がいる可能性は大いにあるのだ。
担当する警視庁捜査2課は、なりすまし犯の「池袋のK」の所在すら、いまだ掴めていない。全容解明までの道程は長い。
※週刊ポスト2017年9月8日号
続報
積水ハウス、地面師を告訴 被害63億円、詐欺容疑で捜査
2017/9/15 18:28 共同通信
所有者に成り済まし、土地を売買する「地面師」グループの男女数人に63億円をだまし取られたとして、積水ハウスが15日、詐欺容疑で警視庁に告訴状を提出した。警視庁は同日付で告訴状を受理して捜査を本格化させ、実態解明を進める。
積水ハウスによると、問題となっているのは東京都品川区西五反田にある広さ約2千平方メートルの土地。6月1日に代金として63億円を支払い、法務局に所有権移転の登記を申請したが、所有者側が提出したとされる書類が偽造と判明し、登記ができない状況になっていた。