まとめると
女性は1988年4月、博報堂九州支社に嘱託社員として入社。1年契約の雇用契約を29回更新し、今年3月末まで経理などを担当していた。
改正労働契約法の施行で、2018年4月には無期雇用に転換できる権利を得る予定だった。
しかし、博報堂は17年12月、女性に18年度以降の雇用契約を更新しないと伝えた。
無期雇用に転換する直前の雇い止めは無効だとして、福岡県内の女性が勤め先だった広告会社「博報堂」(東京)を相手取り、従業員としての地位確認などを求めて、福岡地裁に提訴した。
2018年7月25日に第1回口頭弁論があり、博報堂側は請求棄却を求めた
正規雇用転換の5年ルール
正規雇用転換の5年ルールと6か月のクーリング期間の問題点については、以前触れたことがあります。
立法時の議論
正規雇用転換ルールを設けた際、次のような議論がありました。
労働側委員「クーリング期間を設けたら、脱法行為を招くだけだ。」つまり、クーリング期間があれば、雇用期間がリセットされて、何度でも有期契約ができることになってしまう。
経営者側委員が「クーリング期間をなくしたら、通算契約期間を経過したらもう雇わないけど、それでかまわないのか」と恫喝。
労働側はこの恫喝に負けて、「仮にクーリング期間を認めないことにすると、5年で離職をした労働者が再度同じ企業で働くことが事実上困難になりまして、同一の企業での再雇用を希望する労働者の就職選択の幅が狭められてしまう。」という理由でクーリング期間が設けられることになりました。
車大手の対応
多くの自動車製造大手会社では、クーリング期間を1か月→6か月に変更していました。
つまり、何度でも有期契約ができるような脱法行為をしていました。
したがって、クーリング期間を長期にしても脱法行為が防げないことが明らかになりました。
博報堂の対応
これに対して、博報堂は5年に達した人は雇わないこととしました。
つまり、クーリング期間が設けられていても、それを利用して脱法行為をするのではなく、通算契約期間を経過したらもう雇わないことにしたのです。
正規雇用転換期の雇止めの要件
経営側からいえば、「クーリング期間が短ければ、再雇用したのに。」ということになるのでしょうか?
しかし、これは正規雇用転換ルールを骨抜きにしろと主張しているのに等しいといえます。
逆に労働者側からいえば、「クーリング期間を設けても、同一の企業での再雇用を希望する労働者の就職選択の幅が狭められてしまうので、クーリング期間は設けるべきではない。」ということになるのでしょうか。
そうすると、車大手のような脱法行為は防げますが、博報堂のような正規雇用転換を防ぐための雇い止めは防げません。
正社員の整理解雇の4要件のように、正規雇用転換期の雇止めの要件を判例を通じて確立することが必要だと思われます。
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