まとめると
平成30年4月13日、内閣の知的財産戦略本部会合・犯罪対策閣僚会議が、インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策(概要案、案、進め方について)を発表した。
そこでは、インターネット漫画やアニメの海賊版が大量に掲載されている3サイトを名指しして、民間事業者による自主的な取組として、ブロッキングをおこなうことが適当と考えられると記載されていた。
4月17日ころまでに、3サイトが閉鎖またはサービスが停止された。
4月23日にNTTグループが準備が整い次第ブロッキングを実施すると発表。
ブロッキングは、憲法(通信の秘密)や、電気通信事業法に違反するおそれがある。
個別事案ごとに緊急避難として適法とすることもできるが、政府は法整備を考えている。
ブロッキングできる範囲が名誉毀損などに広がったり、ブロッキングするかどうかの判断が不透明だったりすると、中国のようなネット状況になってしまう。
海賊版誘導サイトへの対策
運営側の摘発が困難であるので、政府では
① 広告出稿をできないようにする。
② ブロッキング
(日本から閲覧できないようにする。42カ国で実施)
③ 海賊版サイトのドメインの停止
④ 見る行為の違法化・刑罰化
などの対策を検討していることは、漫画文化存亡の危機?拡大する”海賊版サイト”の驚異 でも触れました。
憲法
第二十一条[検閲の禁止、通信の秘密]
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
電気通信事業法
(検閲の禁止)
第三条 電気通信事業者の取扱中に係る通信は、検閲してはならない。
(秘密の保護)
第四条 電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2 電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。
(罰則)
第百七十九条 電気通信事業者の取扱中に係る通信(略)の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
刑法(緊急避難)
第三七条(緊急避難)
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
ブロッキングと検閲
津田氏によると、 ブロッキングする際、接続業者は、全てのユーザーがどのサイトにアクセスしようとしているのかを見てブロックするかどうかを判断することになるので、検閲にあたり、通信の秘密を侵すおそれがあるとのこと。
同様の問題について、あるSNSの創始者は「機械が自動的に読み取り処理するが、そのデータは即座に消されるので、誰も通信の秘密を侵すことはできなくなる。」といって規制を逃れたが、実際はログを残して活用していたという話を聞いたことがあります。
ブロッキングと緊急避難
津田氏によると、児童ポルノについては、2011年からブロッキングがなされているが、緊急避難として適法とされているとのこと。
しかし、今回は、ブロッキングをしたときには、既にサイトは閉鎖されたり、サービスが停止されているので、「現在の危難」がないのでは?とのこと。
ブロッキングと中国化
津田氏によると、法制化するとなると、著作権侵害だけでなく、名誉毀損、プライバシー侵害をするサイトもブロッキングするよう要求がでると思われるとのこと。
そして、ブロックするかどうかを、政府が水面下で判断すれば、政府の要人の名誉侵害するサイトへのアクセスを制限する中国のようなネット状況になりかねないとのこと。
冒頭の政府方針についても、閣僚会議の議事録は非公開とされているとのこと。
元記事
「サイトブロッキング問題」ジャーナリスト・メディアアクティビスト 津田大介 NHKラジオ 4月27日