「工場の盗みは友のため」異例の判決、罰金刑に執行猶予

まとめると

 自動車整備工場から産業用機器(時価計約3万500円)を盗んだとして建造物侵入と窃盗の罪に問われた高知県安芸市の自動車整備士の男性被告(77)。

 

 高知地裁は3月22日、罰金15万円執行猶予2年(求刑罰金30万円)を言い渡した。

 

 この電子機器の所有権を巡っては被告の友人と被害者が争っており、被告は友人のために取り返そうとして犯行に及んだとした。

 

執行猶予

刑法

第二五条(刑の全部の執行猶予)
 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

 

罰金刑に対する執行猶予

刑法

第九条(刑の種類)
 死刑、懲役、禁錮こ、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

 

第一〇条(刑の軽重)
 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。

 

軽重の逆転?

 万引きによる少額の窃盗罪のような場合、回を重ねるごとに刑は次のように重くなっていきます。

① 微罪処分(警察の捜査のみで終了。検察庁に事件送致すらをしない。)

② 罰金

③ 懲役刑(執行猶予付)

④ 懲役刑

 

 しかし、少額の窃盗を重ねるような人は、懲役の前科がついても社会的立場へのダメージがほとんどない一方で、経済的に困窮しており罰金刑を科されると生活が立ち行かなくなってしまう人が相当数います。

 

 そのような人の場合、懲役刑(執行猶予付)よりも罰金のほうが重い刑ということになります。

 

 刑法上は、罰金刑に執行猶予をつけることができます。

 そこで、①微罪処分、②罰金刑(執行猶予)、③懲役刑(執行猶予)、④罰金刑、⑤懲役刑 というように科するようにすれば、軽重の逆転はなくなるように思われます。

 

 しかし、実際、罰金刑に執行猶予が付されるのを見たことがありません。判決でも「量刑慣行上例外的な取り扱い」と判示しています。

 

満つるまで算入

 そこで、このような場合「満つるまで算入」ということが行われます。

刑法

第二一条(未決勾こう留日数の本刑算入)
 未決勾こう留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。

 

 例えば、逮捕されてから判決まで3か月勾留された人に対して罰金30万円を科する場合

被告人を罰金30万円に処する。

未決勾留日数中(60日を)、その1日を金5000円に換算して、その罰金額に満つるまでの分を、その刑に算入数する。

というような判決にして、実質的に罰金刑の執行猶予と同じような結果とすることがあります。

 

元記事

「工場の盗みは友のため」異例の判決、罰金刑に執行猶予
加藤秀彬 2019年3月23日12時27分  朝日新聞デジタル

 

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2019年03月23日|ブログのカテゴリー:刑罰