NHK 受信料を支払う義務

 NHKがホテルに、受信契約をしていないテレビについて3か月分の受信料約6500万円の支払いを命じる判決(東京地裁平成27年10月29日判決集未登載)について、慶応大学の平野裕之教授の評釈がありました(TKCローライブラリー2016.05.06民法(財産法)No.111

 事案

 もともとNHKとホテルは、差しあたっては、客室稼働率を考慮してホテルに設置されがテレビのうち一定割合について受信契約を締結していたようなのですが、ある時期から全台について受信料を請求したようです(推測)。

 判決

 判決は、①放送法64条1項は受信機設置者に受信契約を締結する義務を定めるだけであって、NHKが契約締結を求めただけでただちに契約が成立するわけではない。
②しかし、NHKが意思表示に代わる判決を求めた場合、判決確定時に受信機設置者が申し込みを承諾する意思表示をしたものとみなされ、契約が成立する。
③契約が成立した場合、放送受信規約4条に「受信機設置時にさかのぼって契約が成立する」とされていることから、受信機設置の日にさかのぼって受信料支払義務が生じる。

 平野教授の評釈

 平野教授は、①公共施設を利用した人に利用料支払いを義務付けることが問題ないのと同様、契約としながら締結を強制すること自体は問題がない。
②受信機設置者が、受信機を使って民放だけを見る自由や、ゲームだけを表示する自由が阻害されている。
③(地デジ化されて以降は?)NHKはスクランブルをかけることによって、受信契約をしなければ受信できないようにすることもできるようになった。
④放送法64条1項は、制定時はNHKを見る目的で受信機を設置するものだったので不合理ではなかったが、現在では対処可能であるのに憲法違反(自由を阻害?)ともいうべき状態においている点において不合理であり無効。
⑤法ではなく契約約款に過ぎない受信規約で、契約がいつから成立するかをNHKが一方的に決められるというのも疑問。

 受信料を支払う義務

 受信料については、「見ていないのにどうして支払わないといけないの。」という疑問にどのように答えればいいのか、回答を見つけられないままでいました。

 中学生の時に読んだ本田勝一氏の「NHK受信料拒否の論理」は、「どうして見たくないのか」という点をベトナム戦争を時代背景に述べられていたのが印象に残っていますが、「どうして払わなくてもよいのか。」については思い出せません。

 弁護士になってからは、VHF波の時代、どうして支払わないといけないのかが説明できるのか?支払わなくてもよい理由が説明できるのか?を検討したことがありました。一応、東京地裁の判決のような論理は思いつくのですが、どうもしっくりこないままとなっていました。

 今回、平野教授の評釈をみて、しっくりこなかった理由がやっとわかりました。

 ただ、平野教授は、⑥スクランブル方式にすると、NHKの財政は破綻してしまうので、税負担方式にするべき。そうしても、戦前のような言論統制の心配はない。と言われていますが、籾井会長になってからの状況をみると、そこまで楽天的に考えるのもどうかと。

 

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2016年05月11日|ブログのカテゴリー:放送法, 産業法