勾留認めず、1割超え=東京と熊本、全国でも5%迫る―裁判官の意識変化か・最高裁

まとめると 

 警察が逮捕した容疑者について、検察が行った「勾留請求」を東京地・簡裁が却下した割合が2017年に12.69%となった。

 却下が多いのは、見ず知らずの相手に対する痴漢▽酔っ払い同士の暴行・傷害▽万引き▽公務執行妨害―などの事件。痴漢では、否認している場合でも勾留を認めないケースもあるという。

 最高裁が14年と15年、電車内痴漢と成年後見人の横領事件で、勾留を認めない地裁判断を支持したことも、却下率の上昇を後押ししている

 

 

刑事訴訟法(逮捕~勾留の手続き)

 逮捕

第一九九条[逮捕状による逮捕]
 …司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。

 警察の弁解録取・検察官送致

第二〇三条[司法警察員の弁解録取等、検察官送致の時間制限、弁護人選任権告知、国選弁護手続の教示等]
 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、…は、

① 直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、

② 留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、

③ 留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

 検察の弁解録取・勾留請求

第二〇五条[送致後の検察官の弁解録取等、勾留請求の時間制限]
 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、

① 弁解の機会を与え、

② 留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、

③ 留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。

2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。

 勾留決定

勾留の理由

第二〇七条[被疑者の勾留、弁護人選任権の告知、国選弁護手続の教示]
 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

 

第六〇条[勾留の理由、勾留の期間] 

 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。

一 被告人が定まつた住居を有しないとき。

二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

 

勾留状の発布

第二〇七条[被疑者の勾留、弁護人選任権の告知、国選弁護手続の教示]
5 裁判官は、…勾留の請求を受けたときは、

 ① 速やかに勾留状を発しなければならない。

 ② ただし、勾留の理由がないと認めるとき…は、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

 勾留期間

第二〇八条[勾留期間、期間の延長]
 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない

刑事訴訟法(準抗告)

第四二九条[裁判官の裁判に対する準抗告
 裁判官左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
一 略
二 勾留…に関する裁判
三 略
四 略
五 略

 

第四三二条[準用規定]
 …第四百二十六条…の規定は、第四百二十九条…の請求(準抗告)があつた場合にこれを準用する。

 

第四二六条[抗告に対する決定]
2 抗告(準抗告)が理由のあるときは、決定で原決定を取り消し、必要がある場合には、更に裁判をしなければならない。

 

刑事訴訟法(特別抗告)

第四三二条[準用規定] 

…第四百二十七条…の規定は、第四百二十九条…の請求(準抗告)があつた場合にこれを準用する。

 

第四二七条[再抗告の禁止]
 抗告裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。

 

第四三三条[特別抗告]
 この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる

 

第四〇五条[上告のできる判決、上告申立理由]
 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
二 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
三 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

 

14年(H26)の最高裁判決

<事案>

京都市営地下鉄で、朝の通勤時間帯に、痴漢をした。

 

<原々審>

勾留請求を却下

 

<原審>

勾留の必要性を肯定。

「被疑者と被害少女の供述が真っ向から対立しており、被害少女の被害状況についての供述内容が極めて重要であること、被害少女に対する現実的な働きかけの可能性もあることからすると、被疑者が被害少女に働きかけるなどして、罪体について罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると認められる」

 

<最高裁>

 本件事案の性質に加え、本件が京都市内の中心部を走る朝の通勤通学時間帯の地下鉄車両内で発生したもので、被疑者が被害少女に接触する可能性が高いことを示すような具体的な事情がうかがわれないことからすると、原々審の上記判断が不合理であるとはいえない

 

 原決定の説示をみても、被害少女に対する現実的な働きかけの可能性もあるというのみで、その可能性の程度について原々審と異なる判断をした理由が何ら示されていない。

 

 → 最高裁HP

 

15年(H27)の裁判例

<事案>

 平成20年11月に、成年後見人が、保管している口座から300万円を横領した。

 平成23年6月に、家庭裁判所が告発。

 被疑者は任意出頭にも応じていたが、H27(?)になって、警察が逮捕・

検察が勾留請求。


<原々審>

 勾留請求を却下。

 

<原審>  

 原々審を取り消した。

 (1) 本件事案の性質及び内容、取り分け、被害者が成年被後見人であって現在死亡していることや被害額、被疑者の供述内容等に照らすと、被疑者が、本件の罪体等に関し、関係者に働きかけるなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由が認められ、また、これらの事情に加え、被疑者の身上関係等を併せ考慮すると、被疑者が逃亡すると疑うに足りる相当な理由も認められる、

(2) 家庭裁判所からの告発が平成23年になされ、捜査が相当遅延しているものの、現時点においては、本件の公訴時効の完成が迫っており、起訴不起訴を決する最終段階に至っていることからすると、勾留の必要性がないとまではいえない

 

<最高裁>

 

 平成20年11月に起きた事件であり、平成23年6月に大阪家庭裁判所から大阪府警察本部に告発がされ、長期間にわたり身柄拘束のないまま捜査が続けられていること、

 本件前の相当額の余罪部分につき公訴時効の完成が迫っていたにもかかわらず、被疑者は警察からの任意の出頭要請に応じるなどしていたこと、

 被疑者の身上関係等

  → 本件が罪証隠滅・逃亡現実的可能性の程度が高い事案であるとは認められない

 

 原決定は、捜査の遅延により本件の公訴時効の完成が迫ったことなどを理由に、勾留の必要性がないとまではいえない旨説示した上、原々審の裁判を取り消したが、この説示を踏まえても、勾留の必要性を認めなかった原々審の判断が不合理であるとしてこれを覆すに足りる理由があるとはいえず、原決定の結論を是認することはできない。

 

 → 最高裁HP

 

元記事

勾留認めず、1割超え=東京と熊本、全国でも5%迫る―裁判官の意識変化か・最高裁 
yahooニュース(時事通信)4/29(日) 6:18配信

 

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2018年04月29日