法務省は、刑事手続きをIT化し、逮捕や家宅捜索で必要な令状をオンラインで請求、発付する「電子令状」を導入する方向で検討を始めた。早ければ来年の通常国会に刑事訴訟法など関連法の改正案提出を目指す。政府の規制改革推進会議(首相の諮問機関)が27日まとめた答申を踏まえ、近く法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する見通し。
刑事手続きのIT化に向け法務省は昨年3月、有識者らによる検討会を立ち上げ、1年間の議論を経て、今年3月に報告書を取りまとめた。現状は紙でやりとりされている令状の電子化と、弁護人による検察の開示証拠の閲覧、コピーをオンラインでも可能にすることが柱。
令状は捜査機関が容疑者の逮捕や家宅捜索など強制捜査を行うのに必要だが、現行法では書面で請求することが定められており、警察官らが裁判官に資料を持参して発付を受けなくてはならない。地域によっては長時間の移動を強いられ、迅速な捜査の妨げになっている。
「司法統計」によると、2020年度、全裁判所が発付した令状の総数は44万1139件。法改正で「電子令状」が実現すれば、請求書類も令状も電子データとしてオンラインで送信可能になり、警察と裁判所双方の大幅な負担軽減につながる。
また、弁護人はこれまで検察による証拠開示を受けると、直接検察庁に出向いて閲覧、コピーを取る必要があり、大量の証拠書類が作成された場合は大きな負担になっていた。証拠書類の電子データ化が実現すれば、弁護側は必要な証拠をデータで検索、受け取ることもできるようになり、事務作業の手間が省ける。
司法分野のIT化は民事裁判で先行しており、提訴から判決まで手続きをオンラインで可能にする改正民事訴訟法が今国会で成立。刑事分野でもデジタル技術による業務の合理化が期待される。
元記事
2022年05月29日14時29分 時事通信