まとめると
大麻所持事件の東京地裁判決に対して、検察側が控訴した。
検察官の求刑は懲役1年6ヶ月、地裁判決は 懲役1年6ヶ月 執行猶予3年 だった。
検察の求刑が重すぎたとして、検察弁護双方が控訴、東京高裁判決は懲役6月 執行猶予3年で確定した。
大麻取締法
第1条
この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。 ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
第24四条の2
大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
求刑が宣告刑に直結している
刑事事件では、求刑の80%の長さの刑が下されると言われています。私の経験でもほぼそのようになっています。
ただし、執行猶予付きの判決の場合は、求刑の100%の長さの刑が下されることがほとんどです。
量刑資料
検察庁は、同種事案の量刑の資料を作成し、これをもとに求刑をしているようです。NHKのラジオニュースによれば、検察庁は100件以上の事案を調べて、1年以上の判決を下しているものはなかったことから控訴したとのことでした。
裁判所も量刑資料を持っているはずです。裁判員裁判では過去の判決のデータベースを作り、それをもとに裁判員が量刑を決定すると聞いています。ただ、大麻取締法違反は裁判員裁判の対象外なので、データベースがあるかどうかは分かりません。
弁護人の場合、数年ごとに弁護士に対するアンケートの結果をもとに量刑資料が作られています。全件調査ではないので、適切な事例がない場合もあります。
気づかなかったのか、あえて争わなかったのか
薬物事件で営利性がなく前科もない場合、まず間違いなく執行猶予付きの判決になります。また、無罪を争うのでない限り、事案の内容によって判決の内容が変わることはほとんどありません。ですから、弁護人の関心は、量刑を引き下げることではなく、起訴~判決までのあいだ保釈決定を得ることに集中しがちです。
また、最終弁論のときも量刑については執行猶予付き判決を得ることに集中しがちで「社会内での更正の機会が与えられるべき」という程度になってしまいがちです
。
ですから、求刑が重すぎることを見落としてしまったのかもしれませんし、気づいたけれども執行猶予付きの判決が出たので控訴をして裁判を長引かせるのを避けたのかもしれません。
元記事
「刑重過ぎ」検察が異例控訴=東京高裁で減刑、大麻所持事件 時事ドットコムニュース(2017/10/05-18:47)
大麻取締法違反事件で東京地裁が言い渡した有罪判決について、東京地検が「刑が不当に重かった」として控訴していたことが5日、関係者への取材で分かった。地裁は検察側求刑通りの懲役刑に執行猶予を付けたが、判決後に求刑が重過ぎたことが判明したという。