まとめると
広告大手・電通の違法残業事件で10月6日に判決
会社が労働基準法違反(長時間労働)に問われた。
東京簡裁はは求刑通り罰金50万円の判決を言い渡した。
労働基準法
(労働時間)
第32条
① 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
(時間外及び休日の労働)
第36条
① 使用者は、…労働組合…との書面による協定をし…た場合においては、第32条…の労働時間…に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長…(す)ることができる。
第119条
次の各号の一に該当する者は、これを6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。一 …第32条…の規定に違反した者
第121条
① この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。
ただし、事業主(事業主が法人である場合においてはその代表者…を事業主とする。次項において同じ。)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限りでない。
② 事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかつた場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた場合又は違反を教唆した場合においては、事業主も行為者として罰する。
「36条本文違反」も119条で処罰できるのか?
36条は、32条の労働時間の制限を緩めるものです。
しかし、119条には「32条違反」は罰すると書かれていますが、「36条違反」を罰するとは書かれていません。
この点が争われた裁判がありますが、36条の協定を超えるまでは違法ではないが、超えた時点 で 3 2条違反となるとされています (最判H21.7.16民集63-6-641)
1週間の時間制限違反と1日の時間制限違反
32条(36条)は、1週間の労働時間の上限と、1日の労働時間の上限を定めています。
ある週の労働時間が両方に違反する場合、刑はどうなるのでしょうか?
刑法
1 法条競合
2つのうち1つだけが適用される。
2 併合罪
第45条
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
(罰金の併科等)
第48条 ② 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
(罰金)
第15条
罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。
両者は 併合罪とされています
この点について争われた裁判では、週単位の違反と1日単位の違反は社会的見解上別個のものなので、併合罪となるとされています(最判H22.12.20民集64-8-1312)。
併合罪の場合、刑の上限と下限は?
報道では、従業員4人について、36協定に違反して残業をさせたとされています。
上限は、4人×(週労働時間違反+日労働時間違反)
=4×(30万円+30万円)
=240万円となります。
下限は、各罪の下限のうち重いものとされているので、1万円となります。
刑が軽すぎる?
本件では、従業員の方が過労自殺されているのに、求刑が罰金50万円だったので、の求刑がなされたとき軽すぎるという批判が多かったようです。
これは、違法に残業させた場合に、従業員が過労死するかもしれないということを想定せずに刑を決めたからでしょうか?過労死は別途刑を求めることができると考えたからでしょうか?
立法の時の資料を見ないと、何とも言えませんが。
なお、過失致死(刑法210)は50万円以下の罰金、業務上過失致死・重過失致死(刑法211)は10年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですので、これと比較すると軽くはないようにも見えます。
しかし、そもそも法律の基準がおかしいのかもしれません。
学生のころ、「日本の刑法は量刑は、財産犯については重く、生命・身体に対する罪については軽い」と聞いたことがあります。
また、歴史的に見ても、江戸時代は、財産犯の刑はかなり重かったようです(10両で死罪などといわれているようです。)。
最近は性犯罪について重罰化されました。
少し前は、交通事故の刑が軽すぎるという批判があり、重罰化がなされました。
裁判員裁判が導入された理由も、刑が市民感覚に合っていないといものだったはずです。
元記事
違法残業:電通に罰金50万円の判決 東京簡裁 毎日新聞2017年10月6日 15時04分(最終更新 10月6日 21時00分)
