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親権者による子どもへの懲戒権の規定を削除するなどの民法改正案が12月8日、参議院法務委員会で全会一致で可決され、今国会で成立する見通しとなった。現行の民法822条は、しつけとして児童虐待を正当化する口実に利用されているとの指摘があった。
現行の民法では、820条で「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と、親権者の監護と教育の権利義務を規定し、これを受けて822条で「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」と懲戒権を定めていた。今回の改正で822条は削除され、現行の821条を822条とし、821条に新たに「親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするにあたっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢および発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」とする子どもの人格の尊重に関する規定を新設する。
民法の懲戒権の規定を巡っては、長年にわたり児童虐待を正当化する口実に利用されているという指摘があり、親権者や児童福祉施設の長らが子どものしつけとして体罰を加えることを禁止した改正児童虐待防止法でも、附則で同法施行後2年以内に、民法における懲戒権の在り方について検討を加えるよう求められていた。
また今回の改正では、子どもの無戸籍問題の大きな要因となっていた法律上の父親について定めている嫡出推定についても見直しが行われ、離婚後300日以内に生まれた子を前夫の子とする原則は維持しつつ、出産時に女性が再婚していれば現夫の子とする例外を新設した。
経過
11月17日衆議院で可決。
12月10日に参議院で可決(成立)。
12月16日公布。
元記事
2022年12月9日 教育新聞 藤井 孝良(教育新聞記者)