「だまされたふり作戦」で摘発 被告の有罪確定へ

まとめると

 「だまされたふり作戦」詐欺の電話に気づいた人が警察と協力して現金の受け取り役をおびき出す捜査手法

 

 摘発され、詐欺未遂の罪に問われた被告の裁判で、最高裁判所は有罪判決被告側の上告を退け、2審の有罪判決が確定した。

 

1審は無罪だったが、福岡高裁は有罪、最高裁は、相手がだまされていることに気づいたとしても罪に問えると判断した。

 

だまされたふり作戦

だまされたふり作戦については、以前触れたことがあります。

 

本件は、だまされたふり作戦自体が適法か否か(おとり捜査ではないか?など)が問われたものではなく、だまされたふり作戦発動受取にだけ関与した受け子が詐欺の共同正犯となるかどうかが争われました。

 

本件の事案

① 犯行に至る経緯

  平成27年2月下旬頃、Aと名乗る氏名不詳者は、被害者方に複数回電話を掛け、「●の推薦で、当選金額1980万円が必ず当たるロト6の特別抽選に選ばれた人に案内している。」旨を告げた。

  3月初旬、Aは被害者に対し「特別抽選に参加するためには銀行に金を払わなければならない」と指示し、被害者はAの指定する送付先に、3月4日に50万円を、3月13日に100万円をそれぞれ宅配便で送った。

② 欺罔行為

  平成27年3月16日、Aは、被害者に電話で「被害者さんの100万円が間に合わなかったので、本当はしてはならないが、立て替えて100万円を私が払いました。」「被害者さんじゃない人が送ったことが銀行にばれてしまい、今回の特別抽選はなくなりました。」「不正があったので、銀行にAと被害者さんで297万円の違約金を払わないといけなくなりました。違約金を払わないと今度の抽選にも参加できないので、半分の150万円を準備できますか。」などと告げた。

③ 錯誤

  それを聞いた被害者は息子に相談したところ、詐欺に遭っていると言われた。

  3月21日、警察署に赴いて警察官と相談し、被害者も自身がだまされていたことを認識した。

④ だまされた振り作戦

  3月21日警察官はAに対し詐欺の犯人を捕まえるため引き続きだまされたふりをしてほしいと依頼し、Aはそれに応じた。

⑤ 被告人の共謀

  被告人は、後難を恐れて名前を明らかにできない知人の依頼により、空き部屋に送られてくる荷物を偽名で受領し、それを上記知人に渡すという役割を引き受けて報酬を約束された。

⑥ 財物交付
  3月24日午前10時35分頃、Aは、被害者に対し、電話で、送付先を大阪市城東区内所在の空き部屋、宛名を●、品名を「本」として、現金を入れた荷物を宅配便で送付するよう伝え、配達時間帯も指示した。

  3月24日午後0時40分頃、被害者は不要な本を詰めた荷物を大阪市城東区内所在の空き部屋に宛て発送した。
  3月25日午後0時56分頃、●運輸の配達員を装った警察官が荷物を持って本件受領場所に赴き、室内にいた被告人が本件荷物を受け取ったので、警察官は被告人を詐欺未遂の現行犯人として逮捕した。

第1審

 ① 承継的共同正犯の成否

(1) 問題の所在

 本件では、A(先行者)が詐欺の実行行為である欺罔行為を開始した後に、被告人(後行者)がCらに共謀加担したことになるが、そのような被告人に、詐欺未遂の共同正犯(いわゆる承継的共同正犯)の罪責を問うことができるかが問題となる。

 

(2) 視点

① 原則

 共犯の処罰根拠は、共犯が犯罪結果に対して因果性(寄与)を持つという点に求められるべきである(因果的共犯論)。

 

 共謀加担前の先行者の行為により既に生じた犯罪結果については、後行者の共謀やそれに基づく行為がそれに因果性を及ぼすことはありえないから、後行者が共同正犯としてそれに責任を負うことはないというべきである。

 

② 詐欺罪の場合

 本件で問題となる詐欺罪については、欺罔行為、それによる被欺罔者の錯誤、その錯誤に基づく財物の交付及び交付された財物の受領という、因果関係によって結びつけられた一定の段階を経て成立する犯罪類型であるから、未だ詐欺の犯罪行為が終了していない段階で、後行者が、共謀加担前の先行者の行為の効果を利用することによって犯罪の結果に対して因果関係を持ち、その結果犯罪が成立するという場合が想定できるから、そのような場合には、承継的共同正犯の成立を認めることができると考えられる。

 

③ 未遂罪の場合

  本件で被告人に問われているのは詐欺未遂の罪責であるから、未遂犯の処罰根拠は何かを見定めておく必要があるが、この点については、犯罪を決意した性格の危険性などではなく、当該犯罪の結果が生ずる危険性を発生させたという点に、可罰性の根拠があると考えるべきである。


 そうすると、本件においては、後行者である被告人が、詐欺の結果が生じる危険性を発生させることについて、何らかの因果性を及ぼした(寄与があった)といえるか否かが問題の核心である。

(3) 検討

 被害者は、Aの欺罔行為によって、一時は錯誤に陥ったが、その後、だまされていることに気付いて錯誤から脱しており、本件荷物を発送したのは、欺罔行為に起因する錯誤に基づくものではなく、専ら、警察官の犯人逮捕に協力するという意図から行ったものである。

 

 Aによる欺罔行為と、被害者による本件荷物の発送(交付)との間に因果関係が存しない

 

 したがって、被告人が本件荷物を受け取った行為は、詐欺の構成要件に該当する行為(実行行為)ではない。

(4) 結論

 被告人は詐欺未遂罪の共同正犯の罪責を負うとは認められない。

 

控訴審

 ① 財物交付の部分のみに関与した被告人につき、いわゆる承継的共同正犯として詐欺罪の成立を認めうるか

 欺罔行為の終了後、財物交付の部分のみに関与した者についても、このような時期・方法による加担であっても、先行する欺罔行為と相俟って、財産的損害の発生に寄与しうることは明らかである。

 

 また、詐欺罪における本質的な保護法益は個人の財産であって、…錯誤に陥った者から財物の交付を受ける点に同罪の法益侵害性があるというべきである。

 

 → 本質的法益の侵害について因果性を有する以上、詐欺未遂罪の共同正犯が成立する。

 

 ② 「騙されたふり作戦」が実行されたことが同罪の成否に影響するか

 被告人が加担した段階において、法益侵害に至る現実的危険性があったといえるか

 

 その判断に際しては、当該行為時点でその場に置かれた一般人が認識し得た事情と、行為者が特に認識していた事情とを基礎とすべきである。

 

 本件で「騙されたふり作戦」が行われていることは一般人において認識し得ず、被告人ないし本件共犯者も認識していなかったから、これを法益侵害の危険性の判断に際しての基礎とすることは許されない

 

 被告人が本件荷物を受領した行為を外形的に観察すれば、詐欺の既遂に至る現実的危険性があったということができる。

 

→ 詐欺未遂罪の共同正犯が成立する。

 

上告審

 被告人は,本件詐欺につき,共犯者による本件欺罔行為がされた後,だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに,共犯者らと共謀の上,本件詐欺を完遂する上で本件欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している

 

そうすると,だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず,被告人は,その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき,詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。

 

元記事

「だまされたふり作戦」で摘発 被告の有罪確定へ
NHKニュースウエブ 12月13日 21時14分

 

平成29年12月11日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却

平成29(あ)1079  詐欺未遂被告事件

 

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2017年12月16日