児童虐待などの対応にあたる新資格「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」(仮称)について、国家資格化が見送られる方向となった。新資格の扱いを巡り、関係者の意見が対立していたが、自民党厚生労働部会が見送りを容認したためだ。ただ、国家資格化を求める声は依然として根強く、今後の検討課題としてくすぶっている。
「社会福祉士らに試験」で対応
虐待対応 国家資格化見送り
「様々な意見があったが、最後は拍手が起こるほど納得し了承していただいた」
自民党厚労部会の牧原秀樹部会長は28日の会合終了後、 安堵あんど の表情を浮かべた。議論の結果、新資格は既存の社会福祉士などの国家資格に、民間の認定資格を上乗せする厚労省案を容認することでまとまった。国家資格については、厚労省が通常国会に提出する児童福祉法改正案の付則に「施行後2年を目途に検討する」との文言を盛り込むことで落ち着いた。
党内の意見を二分していたのは、児童虐待の対応にあたる専門職の新資格「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」(仮称)の制度設計についてだ。厚労省は児童福祉法改正案に新資格を明記する方針で、2024年の導入を目指して、現在、厚労省社会保障審議会の専門委員会で議論している。
新資格の創設には、児童虐待に対応する職員の専門性を高める狙いがある。
現在、児童虐待には、児童相談所の「児童福祉司」が対応している。児童福祉司は一定の実務経験を積み、自治体などの講習を受けた職員らを自治体が任用しているが、資格試験がなく、知識や経験にばらつきがある。自治体の人事異動に伴って短期間で児童福祉の現場を外れてしまうこともあり、専門性を高められないとの声が出ていた。
厚労省案は、国家資格の社会福祉士や精神保健福祉士が、一定の実務経験や研修を受けた上で、民間の認定試験を受けて新資格を取得するという「上乗せ型」が柱だ。
この案は、職能団体の日本社会福祉士会や日本精神保健福祉士協会などが「ソーシャルワークの知識や経験がある人が試験を受けるので、子ども分野に限らない総合力ある人材が養成できる」「児童虐待問題への対応を急ぐのが重要で、国家資格では養成に時間がかかる」などとして支持してきた。
一方、「一時保護などの判断をするような重大な事案を扱うので、国が専門性を客観的に担保する必要がある」として、一部の議員連盟や有識者は猛反発。独立した国家資格とするよう求めていた。
一時は新資格自体が白紙になる恐れもあったが、「児童虐待をなくすために現場の態勢を整えたいとの熱い思いは一致した」(牧原氏)として、決着した。ただ、「将来的には国家資格化したい」(自民党議員)との声もあり、今後も課題としてくすぶりそうだ。
元記事
2022年2月14日 ヨミドクター(石井千絵)