不慮の事故や病気などで会社へ行けない、仕事ができないとなった際に利用できる健康保険制度ですが、改正「健康保険法」が2022年1月に施行されました。
背景には、今後の少子高齢化などの問題に備え、高齢者だけではなく子育て世代や現役世代も支える保障制度の構築があります。
今回は改正ポイントを3つにわけてご紹介します。
ポイント①:傷病手当金制度の見直し~2022年1月施行~
一つ目の変更点は「傷病手当金」の支給期間です。
傷病手当金とは、病気やケガなどで会社を一定期間休むこととなった場合(給与の全部または一部を受けていない場合に限る)に生活の保障として給与の約6割を支給する制度です。
社会保障制度と聞いてこの手当を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
今回の改正で支給期間の考え方が以下のとおり改められました。
改正前:支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間支給する
改正後:支給を始めた日から通算して1年6か月間支給する
参照:健康保険法99条
今までの基準では、復職後給与の支払いがあった期間も支給期間として含まれており、復職と休職を繰り返して行った際に後半の休職分の支給が行われないという問題がありました。
改正後は、給与の支払いがあった期間に関しては支給期間には含まれないため、仕事と療養の両立を身体的にも精神的にも安全かつ安心に行えるようになりました。
仕事復帰後に病気が再発した場合や、メンタルヘルス不調による休職の際にはとても助かる制度となりますね。
ポイント②任意継続被保険者制度の見直し~2022年1月施行~
2つ目は「任意継続被保険者制度」の喪失資格事由の追加です。
任意継続被保険者制度とは、会社を退職して被保険者の資格を喪失した際に以下の条件を満たしていれば、本人の希望で被保険者となれる制度となります。
1. 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること
※退職せず、勤務時間・日数の減少により健康保険の資格を喪失した場合も該当します。
2. 資格喪失日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること
一見良いように見える制度ですが、保険料は退職前会社が負担していた保険料を加算した金額を支払う必要があります。
退職前の給与額によっては国民健康保険の方が負担が低い可能性がありますので、注意しなくてはなりません。
新たに追加された喪失資格事由は以下のとおりです。
・任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を、厚生労働省令で定めるところにより、保険者に申し出た場合において、その申出が受理された日の属する月の末日が到来したとき
参照:健康保険法38条
本項目が追加されたことにより、任意継続被保険者の方がいつでも資格を喪失することができるようになりました。
会社を退職される際にはご自分の状況に応じて制度を利用してみてはいかがでしょうか?
ポイント③出産育児一時金の支給内訳の変更~2022年10月施行~
3つめ目は「出産育児一時金」の支給額の内訳の変更です。
「出産育児一時金」とはその名称からもわかるように、被保険者もしくはその扶養者が出産した際、赤ちゃん1人につき42万円を支給する制度です。
今回、産科医療補償制度の改正により、産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産をした場合の支給金額が変更となりました。
改正前:40.4万円
改正後:40.8万円
産科医療補償制度とは、安心して産科医療を受けられるよう創設された制度で、多くの医療機関が加入しているものになるため、影響度はそこまで大きくないでしょうが、制度について再確認しておくことをお勧めします。
また、出産のため休業をして給与がない場合に支給される出産手当金という制度もありますので、ご自分の身の回りに出産が近い方がいらっしゃるのであれば調べてみるのも良いでしょう。
元記事
2022/2/14 産業保険新聞 大野 勝己