厚生労働省は虐待や貧困などで保護され、児童養護施設や里親の家庭で暮らす子どもや若者が支援を受けられる年齢の制限を撤廃する方針を固めた。現在は原則18歳、最長でも22歳で自立を求められるが、年齢ではなく自立可能かどうかで判断し、大人向けの支援に引き継ぐまで継続的にサポートを受けられるようにする。開会中の通常国会に児童福祉法改正案を提出する。
厚労省によると、児童養護施設などで暮らす子どもや若者は、2021年3月時点で全国に約4万2000人いるが、現行の児童福祉法では、施設などで暮らせるのは原則18歳までとなっている。継続的な支援が必要と判断された場合は最長で、22歳を迎える年度末まで延長可能だが、大半は高校卒業とともに自立を求められる。
一方、施設などを離れたケアリーバーには頼れる大人がおらず、虐待を経験したことによる心身の不調などから、退学や離職に追い込まれたり、孤立や困窮状況に陥ったりするケースが少なくない。厚労省が21年に公表した実態調査では、5人に1人が施設を出た後、収入より支出の多い「赤字」の生活に陥っていた。また、自立を促すため、交流を控える施設もある。
厚労省はこうした状況を踏まえ、年齢で一律に支援期間を区切るのではなく、対象となる子どもや若者が自立可能かどうかに着目する必要があると判断した。
具体的には、児童福祉法を改正して支援対象の年齢制限をなくす。継続的な支援が必要と判断した場合は、大人向けの就労支援や困窮者向けの給付金、医療機関につなぐまでの間、施設や里親の家庭、自立支援のための専門施設などで暮らせるようにする。支援の必要性は、都道府県や児童養護施設などが連携して判断する。
厚労省はこのほか、施設などで暮らす子どもや若者の進学や就職、自立後の生活の相談に乗る専門職の都道府県への配置を増やすほか、ケアリーバーに生活費を貸し付ける事業を拡充するなど、サポート体制を強化する。
◆ケアリーバー =虐待や貧困、親との死別で児童相談所に保護され、児童養護施設や里親の家庭などで育った社会的養護の経験者。保護(ケア)を離れた人(リーバー)を意味する。厚労省は昨年、初の全国実態調査の結果を公表するなど、対策を強化している。
元記事
2022/01/31 08:00 読売新聞オンライン