まとめると
戸籍法の規定で日本人が外国人と結婚するときには夫婦別姓を選べるのに、日本人どうしの結婚で選べないのは法の下の平等を定めた憲法に違反するなどとして、国に対して合わせて220万円の賠償を求めていた訴訟。
平成31年3月25日の判決で、東京地方裁判所は「そもそも日本人と外国人の結婚については民法が適用されないと解釈され、日本人どうしの結婚の場合とは状況が異なる」と指摘。
そして「夫婦別姓を認めないことには制度上、合理性がある」として、戸籍法の規定は憲法に違反しないと判断し、訴えを退けた。
以前にも取り上げました。
夫婦別姓「戸籍法は容認」国際結婚で選択可、民法合憲を問う 事実婚2人提訴へ
日本人と外国人との結婚について民法が適用されないのか?
民事局長通達
夫の氏については夫の本国法、妻の氏については妻の本国法により決すべき(昭55.8.27民事申5218号民事局長通達)。
→ 外国人の本国法が夫婦同姓の場合、外国法に基づいて外国人の氏を変更するか、日本民法750条に基づいて日本人の氏を変更するかいずれか選択することになる?。
→ 外国人の本国法が夫婦別姓の場合、「いかに調整すべきかといった困難な問題が生じる。」(山田鐐一「国際私法」p370参照)
学説・裁判例
婚姻の身分的効力の問題として、法例14条(通則法25条)によるべき。(京都地判S31.12.28、大阪地判S35.6.7、福岡高決S47.12.22、東京家審S43.2.5、東京家審S47.8.21)。
通則法
第二五条(婚姻の効力)
婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
→ 夫婦の常居所地または夫婦の密接関係地法が日本法の場合、民法750条により、夫婦同姓となる。
→ 夫婦の常居所地または夫婦の密接関係地法が日本法の場合、外国法の規定に従い、夫婦同姓または夫婦別姓となる。
戸籍法
第一六条[婚姻による戸籍の変動]
③日本人と外国人との婚姻の届出があつたときは、その日本人について新戸籍を編製する。
第一〇七条[氏の変更]
②外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
→ 外国人の本国法が夫婦同姓の場合でも、夫婦別姓のままにするか、戸籍法107条により夫婦同姓とするか、選択できる。
→ 外国人の本国法が夫婦別姓の場合でも、夫婦別姓のままにするか、戸籍法107条により夫婦同姓とするか、選択できる。
→ 準拠法のいかんを問うことなく、外国法の適用もなく、民法750条の適用もなく、戸籍法のみによって夫婦別姓のままとするか、日本人の氏を変更して夫婦同姓とするかの選択を認めるものといえる(山田鐐一「国際私法」p371参照)。
<批判>
戸籍法は、国際私法に基づき準拠法とされる法律によって定まる氏の変更を戸籍に反映させるため設けられるべき。
夫婦別姓を認めないことには、合理性があるのか?
この点については、最高裁H27.12.16(民集69-8-2586)と同じように日本人同士の場合に夫婦同姓とすることに合理性があるかどうかの議論をしているのでしょうか?
その場合、最高裁は、事実上旧姓使用が容認されつつあることで不利益は解消されていることを合憲の理由の一つとしました。
今回は登記変更だけでも300万円かかってしまったという決して小さくない経済的不利益が指摘されています。この不利益があることについて、東京地裁はどのように判断して合憲と結論付けたのでしょうか?
元記事
「工場の盗みは友のため」異例の判決、罰金刑に執行猶予
加藤秀彬 2019年3月23日12時27分 朝日新聞デジタル