まとめると
入れ墨(タトゥー)をした彫師が、医師法違反に問われた事件。
大阪地裁は平成29年9月27日、罰金15万円とする判決を下した。
大阪高裁は、平成30年11月14日、無罪とする判決を下した。
この件については、地裁判決の時に取り上げました。
このとき、「医行為」は、①人の疾病を診療治療する行為であることを前提としつつ、②医師法が規制していない民間療法との区別の基準として「医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは整理上の危険があるもの」という基準を挙げている最高裁判決(最判S30.5.24(刑集9-7-1093)が「まとも」であると述べました。
地裁判決
医師法17条の「医業」の内容である医行為とは,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解すべきである,と説示する。
(理由)
医療及び保健指導に属する行為ではないが,医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為(美容整形外科手術等)を医師以外の者が行うことが可能となるのは医師法の趣旨に反する。
最高裁判例の事案は,いずれも被告人が疾病の治療ないし予防の目的で行った行為の医行為性が問題となったもので,医行為の要件として上記目的が必要か否かは争点となっていない。
高裁判決
1 医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為とは,医療及び保健指導の目的の下に行われる行為で,その目的に副うと認められるものの中で(医療関連性),医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは,保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいう(保健衛生上の危険性)。
(理由)
① 医師法は、医師の職分は医療及び保健指導を医師に担わせることにより、公衆衛生の向上・増進に寄与し、国民の健康な生活を確保することを目的とする。
そうだとすれば、医師法17条は、医師が行いうる医療及び保健指導に属する行為を無資格者が行うことによって国民の生命・健康の危機発生を防止しようとするものと解するべき。
② 保健衛生上の危険性だけでは、処罰範囲が不明確となるし、医師が行うとは思われないものにまで広がる。
③ 美容整形も、美しくありたいという願いとか、醜さに対する憂いといった、人々の情緒的な劣等感や不満を解消することも消極的な医療の目的として認められるべき。
④ アートメイクは医師法違反であることに争いはないが、これは美容整形の範疇に含むというべき。
⑤ 最高裁判決の事案では、医療関連性が争点となっていないとしても、それが不要であるという解釈が直ちに導かれるものではない。
2 入れ墨(タトゥー)の施術は,医療及び保健指導の目的の下に行われる行為で,その目的に副うと認められるものとはいえず,医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為には該当しない。
元記事
(雇止め男性 スバルを提訴)
(東横インへの受信料支払い命令が確定)