まとめると
平成29年11月8日、自分の家の前の私道を通った男性を「私有地に勝手に入った」といって、転倒させけがをさせた疑いで逮捕された、大阪・堺市に住む男性。
11月24日に、道路交通法違反(道路における禁止行為)で追送検された。
2リットルのペットボトル10本を道路に並べ、そばに置いた椅子に座り、通行人を見つけては「俺の道や通るな」と怒鳴りつけていた。
道路交通法違反
以前の記事 道路を「私有地」と主張 “通行トラブル男”を逮捕 のとおりです。
罪数
①ペットボトルを並べ、そばに置いた椅子に座って「俺の道や通るな」と怒鳴ったこと
→道路交通法違反
→ 物件をみだりに道路に置いた場合
3月以下の懲役又は五万円以下の罰金
→ 寝そべり、すわり、しゃがみ、立ち止まりの場合
5万円以下の罰金
②それでも通ろうとしたを転倒させ怪我をさせたこと。
→傷害罪
15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
→暴行罪
2年以下の懲役又は30万円以下の罰金又は勾留もしくは科料
観念的競合か?
刑法54条(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
① 一個の行為が二個以上の罪名に触れ…るときは、その最も重い刑により処断する。
1個の行為かどうかについては「法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察もとで、行為者の動態が社会的見解上も一個の者として評価を受けるべき場合」(最判s49-5-29刑集28-4-114)か否かによる。
本件では、ペットボトルと椅子を置いて威嚇することと、通行人を転倒させることは、ひとつの行為とは言えません。
従って、観念的競合には該当しない。
牽連犯か?
刑法54条
① …犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
犯罪の手段とは、ある犯罪の性質上その手段として普通に用いられている行為をいう(客観説)。
ある犯罪と、手段もしくは結果たる犯罪との間に密接な因果関係が認められなければならない(最判S24.7.12刑集2-8-1237)。
本件では、道交法違反と、暴行・傷害との間には、性質上目的・手段の関係にあるとはいえない。
したがって、牽連犯には該当しない。
併合罪か?
刑法45条(併合罪)
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。
刑法47条(有期の懲役及び禁錮の加重)
併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
刑法48条(罰金の併科等)
① 罰金と他の刑とは、併科する。…
② 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
本件は、
傷害罪と道交法違反(物件をみだりに置く)
→ 22年6月以下の懲役、55万円以下の罰金、
暴行罪と道交法違反(寝そべりなど)
→ 2年以下の懲役又は35万円以下の罰金又は勾留もしくは科料
となります。
元記事