まとめると
漫画の海賊版サイトへリンクをはるリーチサイト。従前は著作権法に違反しないとの見解が有力だった。
内閣府は、リーチサイトの運営側のの摘発が困難であるとして、内閣府は有識者会議を開き検討。しかし、「ブロッキングありき」の事務局の意向が強すぎて、進行が歪ゆがめられていると紛糾。
山口貴武士弁護士は、アメリカで氏名不詳者を被告に訴訟を提起。アメリカのサーバー運営会社に利用料金の請求資料の提出を請求(サピーナ、書面ディスカバリー)をして、運営者を特定。ブロッキングを容認する根拠はないと批判。
内閣府の有識者会議は、会議としての意見とりまとめを断念した。
ブロッキングの問題点
ブロッキングは、通信の秘密、検閲の禁止(憲法21条)に違反する恐れがあります。
中国ではネットの発言が政府によってブロックされているといわれていますさが、日本もそのようになってしまわないかということです。
内閣府の有識者会議のメンバーである東大教授の宍戸常寿委員(憲法・情報法)は、
ブロッキングが合憲といえるのは、
(1)具体的・実質的な立法事実に裏付けられ、
(2)重要な公共的利益の達成を目的として、
(3)目的達成手段が実質的に合理的な関連性を有し、
(4)他に実効的な手段が存在しないか著しく困難な場合に限られる
との基準を挙げられているが、その基準を満たすことは極めて困難で、合憲にするには針の穴を通すように難しいと述べられているとのことです。
フィルタリング・アクセス警告
総務省は、漫画の海賊版サイトの閲覧を違法化したうえで、利用者の同意を得たうえでフィルタリングをするか、アクセス警告画面を表示することを提案しているようです。
しかし、海賊版の閲覧については、動画や音楽の録画・録音は違法化されていますが、その際、静止画の謄写については、何も知らない人が誤ってクリックすることで犯罪を犯してしまうことになる恐れがあることを理由に違法とはされませんでした。
また、任意のフィルタリングやアクセス警告画面に、どれほどの実効性があるのかは疑問です。
リーチサイトの違法化
文化庁は、リーチサイトの開設を著作権の侵害行為とみなし、著作権者が掲載の差し止め請求をできるようにするほか、提供者らに対する罰則規定を設ける法案をまとめ、国会への提出を目指しているそうです。
しかし、文化庁案も実効性には疑問があります。
① 日本の裁判所で差止め請求が認められるとしても、日本では相手方不詳の訴訟を提起できないので、海外で訴訟を起こして運営者を特定しないと無理です。これでは費用と時間がかかりすぎます。
例外的に、氏名不詳のまま訴えが認められたとしても(名古屋高等裁判所金沢支部平成16年12月28日)、それ以前に氏名特定のための努力をする必要がありそうです。
② アメリカ以外の国のサーバーを利用していた場合、相手方不詳で訴訟を起こすことが認められるかどうかわかりませんし、裁判所の照会にサーバー運営会社が応じるかどうかもわかりません。
③ 日本の裁判所が海外のサーバー会社に掲載を差し止める命令を出しても、海外で執行できるのでしょうか?(できるかもしれませんが、まだ調べていません)
④ 日本で刑罰が科されるとしても、日本の警察で捜査するには、海外の警察の協力が必要となります。これも協力に応じてもらえる国とそうでない国があるのではないでしょうか?(これも調べていません)
元記事
ブロッキングありき?海賊版サイト巡る議論に不満続出
読売新聞編集委員 若江雅子 読売新聞 2018年09月03日 18時30分
前代未聞、ブロッキング法制化巡り委員の半数が反対
読売新聞編集委員 若江雅子 読売新聞 2018年09月20日 17時45分
<海賊版誘導>「リーチサイト」規制へ 運営者らに罰則
10月14日(日)6時0分 毎日新聞
海賊版サイトの遮断法制化で紛糾、まとまらず
2018年10月15日 21時36分 読売新聞