まとめると
覚せい剤取締法違反(営利目的所持)の被告人が3月に保釈された。
保釈後も裁判に出頭、8月の論告求刑にも出頭。
しかし10月6日の判決言渡期日には不出頭、直前に海外に出国していた。
覚せい剤取締法
第四一条の二
① 覚せい剤を、みだりに、所持し…た者…は、十年以下の懲役に処する。
② 営利の目的で前項の罪を犯した者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。
刑法
(懲役)
第一二条
① …有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
刑事訴訟法(裁量保釈)
第九〇条 【職権保釈】
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
刑事訴訟法(保釈金・保釈条件)
第九三条 【保証金額、保釈の条件】
① 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。
② 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
③ 保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる。
刑事訴訟法(保釈の取消し)
第九六条 【保釈等の取消し、保証金の没取】
① 裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈…を取り消すことができる。
一 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
二 被告人が逃亡し(た)…とき。
三 略
四 略
五 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
② 保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。
保釈の申立
保釈の申立をする場合、次の3つを準備します。
①保釈理由の主張
②身元引受人の確保
③保釈金
保釈金は、以前は親族などが用立てていましたが、最近は保釈保証金立替を受けたり、弁護士協同組合の保釈保証書の発行を受けることが増えています。しかし、この場合も90%程度しか立替えや保証を受けれないので、10%は親族などに用意していただきます。また、立替や保証には手数料もかかります。
保釈の決定
保釈決定と同時に保釈金が定められます。
よく「保釈金はいくらですか?」と聞かれるのですが、人によって違うので答えようがありません。
20年ほど前には「初犯の家庭のしっかりしたサラリーマン」なら50万円くらいと教えられました。
今年の夏に研修を受けたとき、講師は「150万円以下に下げてもらえない。」と言われていました。
私は、その中間より少し下が多いように感じています。
ちなみに、過去最高額は20億円だそうです。
その他、保釈条件も定められます。
「関係者と接触しないこと」
「実家に居住すること」
「3日以上の国内旅行や海外旅行をするときは裁判所の許可を受けること」というものが一般的です。
保釈金の還付・没収
判決がでるまで裁判に出頭しつづけた場合は、有罪でも無罪でも、保証金は還付されます(刑事訴訟規則91)
しかし、判決が出る前に逃亡するなどすれば、保釈は取り消されて保釈金は没収されます。
立替を受けていた場合は立替業者に対して賠償しなければなりませんし、保証を受けていた場合は弁護士協同組合に償還しなければなりません。
過去には6億円の保釈金を支払った被告人が逃亡して没収された例があるそうです。このときは6億円のうち弁護人が3億円を保証していたので3億円は弁護人が返済をしたというような話を聞いたことがあります。
元記事
保釈中の被告、判決前に出国 水戸地裁、公判期日延期
福井新聞 2017年10月12日 午前11時27分